2006年08月04日

◆夏の行事、お盆・盂蘭盆会(うらぼんえ)(四)

◆夏の行事、お盆・盂蘭盆会(うらぼんえ)(四)


◆夏の行事、お盆・盂蘭盆会(うらぼんえ)(四)

◆◇◆「お盆」「盂蘭盆会(うらぼんえ)」、先祖霊(祖霊)祭り・魂祭り

 お盆の行事の中心は、家々に先祖霊を迎えて供養することにある。それに伴って訪れる様々な無縁霊・餓鬼の供養も同時に営まれる。日本の古い信仰では、御魂には生者のものと死者のものがあるとされていた。生者の御魂を拝するほうは、宗家の主人や両親に魚などの食物を贈って祝う「生見玉(いきみたま)」の習俗としてお盆行事の一部をなし、これは「生き盆」と称されている。

 「生見玉(いきみたま)」の意識は近年衰えつつあるとはいえ、ますます盛んになる中元の贈答が生見玉への贈り物の延長だとも考えられる。また一方、死者の御魂には仏教が強く関与し、その供養はお盆行事の中核をなしている(お盆には寺僧の関与が強く、一般には仏教行事と多くの人に理解されているが…)。

 柳田國男の分析によると、お盆に祀る死者の御魂には精霊(祖霊)、新精霊(あらじょうろう)(注1)、外精霊(ほかじょうろう)(注2)の三種があるとされている(注3)。

 祖霊とは、その家のかつての戸主夫婦の霊で、死後年を経て浄化され穏やかになり、お盆の期間子孫に迎え祀られて家の豊産安寧を保証してくれると信じられている(先祖霊・祖霊は清らかな神と認識されている例が多い上、健在な両親に対して生臭いもの(魚)を供するというような反仏教的性格もある)。

 現在、各地のお盆行事は複雑で、祖先の「魂祭り」が中心であるとはいえ、それに健在な親を祝う「生見玉(いきみたま)」の習俗、稲の予祝や畑作物の収穫祭的要素、中元(七月十五日)を祝う考えなどが加わっていった。

 お盆に農耕儀礼的性格のあることは、盆棚の飾りや供物に様々な畑作物や稲の青苗を用いていることからもいえる。また、中国の麦作地帯の収穫祭に源があるという中元の祝いと無関係ではないようだ。

 日本のこの時期は、稲作、畑作ともに作業が一段落し、過酷な夏の暑さも峠を越えつつある時で、次に秋を控え、季節の変わり目を意識した何らかの神祭りがあったと思われる。それが民間への「盂蘭盆会」や「中元」の浸透定着を容易にすると共に、お盆行事の構成要素にもなった。

※参考Hints&Notes(注釈)☆彡:*::*~☆~*:.,。・°・:*:★,。・°☆・。・゜★・。・。☆.・:*:★,。・°☆

(注1)新精霊(あらじょうろう)とは、一年ないし三年以内に亡くなったその成員であった者の霊で、死後まだ間がなくて十分に浄化されておらず、荒々しく祟りやすいと考えられている。そのため新精霊を祀る家のお盆は期間がやや長く、祭り方全般が丁重で、それだけ寺僧の関与も強いそうである。このお盆は吉事盆(しばらく不幸の内家のお盆行事)に対して新盆(あらぼん)・初盆(はつぼん)などと呼ばれる。

(注2)外精霊(ほかじょうろう)とは、祖先霊以外の餓鬼・無縁・法界などと呼ばれる、祀る子孫のいない諸霊のことである。招かないのに祖霊や新精霊に随伴してくるとされ、祀り方は全般において差別されている。ただ、外精霊はお盆行事の主役とはいえないが、日本人の霊魂観を知る上では無視できない存在である。

(注3)死をめぐる日本人の民俗的霊魂観によると、肉体は腐敗消滅しても霊魂だけは分離してどこかに存在し続けるとしている。また肉体から分離した当座の霊魂は荒々しいとされている。このような霊魂すなわち死霊は、放置すれば山野に盤鋸して激しく祟りをなすと考えられており、丁寧に鎮め祀れば次第に祟りを和らげ、逆に人々を守護してくれるようにもなると考えられていた。こうした考えは、平安時代、「御霊信仰」を生み出していくのである。


スサノヲ(スサノオ)


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