2006年08月05日

◆夏の行事、お盆・盂蘭盆会(うらぼんえ)(五)

◆夏の行事、お盆・盂蘭盆会(うらぼんえ)(五)


◆夏の行事、お盆・盂蘭盆会(うらぼんえ)(五)

◆◇◆「お盆」「盂蘭盆会(うらぼんえ)」、「迎え火」「迎え盆」
 お盆には、先祖・祖霊(※注1)や亡くなった人たちの精霊(※注2)が燈明を頼りに帰ってくるといわれ、十三日の夕刻に、仏壇や精霊棚(しょうりょうだな)の前に盆提灯や盆灯籠を燈し、庭先や門口で迎え火として麻幹(おがら=芋殻)を焚く。それが「迎え火」(※注3)である。

 盆提灯をお墓で燈し、そこでつけた明かりを持って精霊を自宅まで導くという風習もあり、これを「迎え盆」ともいう。それぞれの「家」毎に鐘やご詠歌や迎え火を設け、先祖の霊魂(※注4)を家の中まで招き入れるのだ。

※参考Hints&Notes(注釈)☆彡:*::*~☆~*:.,。・°・:*:★,。・°☆・。・゜★・。・。☆.・:*:★,。・°☆

(※注1)祖霊という概念は柳田國男が提示した。柳田によると、日本人の民俗的霊魂観のうち、家を興した開発祖先の霊や、それに続く代々の子孫を養育して死を迎え、死後直系の子孫によって四十九日とか一回忌・三回忌というように年忌法要を営んでもらいつつ徐々に浄化をはたす。

 そして誰それの霊としての個性を消失させ、その家の集合的霊格ともいうべき神(もしくは先祖一般、ご先祖様)に融合昇華したと考えられる霊が、祖霊なのだ。

 したがって、祖霊観念は日本人の家意識と密着しており、死後に祖霊として祀り続けてほしいが故に(すなわち無縁霊として打ち棄てられたくないために)、人々は直系の子孫の繁栄と家の永続を願うのである。ただ、近年の家意識の変容は祖霊観にも少なからぬ影響を与えている。

(※注2)祖霊を迎えて行われる代表的行事がお盆とお正月である。家々のお盆行事の中心は祖霊との交歓にある。長野県の諏訪湖畔では「爺さま婆さま、この明りでお出でお出で」と唱えながら墓地で火を焚き、そこから手を後ろに回して爺・婆を背負う格好をして家に戻るというが、この爺・婆には特定の人がイメージされているのではなく、祖先一般すなわち祖霊なのだ。

 このように、あたかも眼前に祖霊の姿が見えるかのごとく、家に案内して盆棚に迎え入れる例は全国に多く、供物をし、その前で家族・一族が数日間賑やかに過ごすのは盆の一般的光景である。

 正月に迎える歳神(年神、稲魂であり祖霊でもある)の性格は盆に迎える霊より複雑であるとはいえ、祖霊としての性格も十分に認められる。このような盆と正月の行事は、一年を両分したそれぞれ最初の月の祖先の魂祭りだと考えられている。

 卯月八日(うづきようか)の神迎えや春秋の彼岸行事も祖霊をめぐる行事であり、霜月二十三夜の大師講や各地の春秋の田の神・山の神去来伝承にも、祖霊の姿を垣間見ることができる。

(※注3)祖霊は家の神なので、氏神信仰とも深い関係にある。氏神には古来以来の変遷があり複雑多岐にわたるので、お盆のような祖霊のみで氏神信仰を理解することはできない。少なくとも、屋敷氏神や草分け宅の祖霊を核に発展したことの明らかな村氏神は、祖霊とかなり深い関係にある。

 平安時代の官人社会では、二月もしくは四月と十一月の春秋二回氏神祭祀をしていたことが明らかになっており、これは神社の祭日にも反映されているとされている。この際日は屋敷氏神や村氏神の祭日とも概ね一致しているので、両者の本質的同一性が確認されれば、祖霊は日本の祭りの考察に欠かせない存在となりそうだ。

(※注4)迎え火とは、お盆に先祖の霊を迎えるために焚く火のことである。お盆の十三日夕方が多いようだが、お盆期間中毎日焚く所もある。墓・辻・門口などのどこかで焚いたり、墓で焚いた火を小さな松明や提灯に点じて持ち帰り再び門口で焚く例など、方法は各地で様々である。

 燃料には麦藁・稲藁・麻幹(おがら)・松の小片・白樺の皮などが用いられている。焚くときは「おじいさんもおばあさんもこの火でござっしゃい」などと祖先迎えの言葉を唱え、そのあと霊を背負う格好をして家に入り盆棚に落ち着かせる仕草をする所や、近くの山頂でムラ共同で杉の葉などを焚き、その煙に乗って祖先が訪れると考えている所もある。


スサノヲ(スサノオ)


同じカテゴリー(スサノヲの日本学)の記事画像
◆新羅神社考、新羅神社と新羅明神の謎(三)
◆新羅神社考、新羅神社と新羅明神の謎(二)
◆新羅神社考、新羅神社と新羅明神の謎(一)
◆夏の行事、お盆・盂蘭盆会(うらぼんえ)(十八)
◆夏の行事、お盆・盂蘭盆会(うらぼんえ)(十七)
◆夏の行事、お盆・盂蘭盆会(うらぼんえ)(十六)
同じカテゴリー(スサノヲの日本学)の記事
 ◆新羅神社考、新羅神社と新羅明神の謎(三) (2006-08-29 00:07)
 ◆新羅神社考、新羅神社と新羅明神の謎(二) (2006-08-27 00:35)
 ◆新羅神社考、新羅神社と新羅明神の謎(一) (2006-08-23 22:24)
 ◆夏の行事、お盆・盂蘭盆会(うらぼんえ)(十八) (2006-08-21 22:34)
 ◆夏の行事、お盆・盂蘭盆会(うらぼんえ)(十七) (2006-08-20 10:21)
 ◆夏の行事、お盆・盂蘭盆会(うらぼんえ)(十六) (2006-08-18 00:00)

Posted by スサノヲ(スサノオ) at 09:05│Comments(0)スサノヲの日本学
上の画像に書かれている文字を入力して下さい
 
<ご注意>
書き込まれた内容は公開され、ブログの持ち主だけが削除できます。