2006年07月04日

◆7月7日の七夕、星の物語と祓の行事

◆7月7日の七夕、星の物語と祓の行事


◆7月7日の七夕、星の物語と祓の行事

◆◇◆七夕は星の物語と「祓」の行事、盆と深く関係する民間行事

 7月7日は、牽牛と織姫が1年に1度だけ天の川で出会う日とされいる。美しい星空を見上げながら、そんな星物語が語られる七夕であるが、わが国では、旧暦の七夕はちょうど夏の収穫の時期とも重なり、この七夕の日は作物の実りを神様に感謝する収穫祭の日でもある。

 他の多くの行事がそうであるように、七夕も元々は中国から渡って来たものであった。神の怒りをかって天の川の両側に隔てられた二つの星が、カササギの橋を渡って1年に一度だけ会える夜とされている。私たちがよく知る、この牽牛(けんぎゅう、彦星)と織女(しょくじょ、織姫)の物語もその発祥は中国なのである。

 織女星は糸や針を司る星だったことから、この日に2つの星にお供えをすれば、織姫にあやかって機織りや裁縫が上手になるという言い伝えが生まれ、やがてそれは「乞巧奠(きこうでん)」という儀式になった。この2つの星の物語と「乞巧奠」が一緒になって日本に入ってきたのが、そもそもの始まりである。

 この「乞巧奠(きこうでん)」は、奈良時代以降に宮中の年中行事に入り、室町時代には詩歌・管弦のの遊びや、芋の葉に溜まった露を使って墨を擦り、和歌を詠むことなども追加された。江戸時代になると、民間行事の中から手習いの上達を願う意味が追加され、竹に願い事を書いた短冊を結び付けて縁側や軒に立てることが広まる。

 一方、日本には「棚機(たなばた)」に関連する「祓(はらえ)」が、旧暦の7月7日頃に行われていた。棚機とは、布を織る機織器のことである。これは、お盆に先祖をお迎えする前に、村人たちの穢れを神様に持ち去ってもらおうとする神事で、奥深い水辺の機屋に穢れを知らない棚機津女(たなばたつめ、布を織る女)が篭って神をお迎えし、お祓いをするというものであった。

 この行事が7日の夕刻、「七夕」と書いて「たなばた」と読ませるのもここから始まっています。また、七夕には多種多様な行事が各地あり、真菰で作った「七夕馬」・海や川へ流して穢れを祓う「七夕送り」などがあります。この後に続く盆との関係からか、身を清めて物忌みをする日・穢れを祓う日と考えられていたようです。

 本来、旧暦5月5日(端午の節句)は、田植えなどの農作業の時期にあたり豊穣豊作を祈願する日であった(都市部では多湿な季節を無病息災に過ごせるよう厄祓いする日である)。そして、旧暦の7月7日(七夕)は梅雨明けの祭り・行事の日である。

 しかし、明治政府は明治六年(1873年)、旧暦から新暦へと変更すると端午など五節句を廃止したため、雛祭り・端午の節句・七夕は一時衰える。しかし、その後七夕は新暦7月7日に、年に一度の星祭りとして短冊に願い事を書き笹の枝に結ぶ行事として盛んになっていくのだ。

 各地の残る民俗行事では、女性が髪を洗い、水浴びや行水を行い、井戸をさらい、膳洗い、硯洗い、虫払いをするなど、梅雨の間の穢れを水で祓う(梅雨の穢れを水に流すなど水に関連した)行事が多く伝わる(現在は、新暦・旧暦・月遅れと地方によって異なっている)。

 それは山青く水清き日本列島の自然環境(東アジアのモンスーン地帯の稲作文化圏でも降雨量の多い国、梅雨文化圏)が、日本人の自然観や素朴な神観念を生み出していく。特に水への信仰は、生きとし生けるものを育み、すべてを清めるとの観念があったのだ。

 こうして、日本列島の自然環境とそこから生まれた精神風土は、日本に独自の「水の文化」「水の信仰」を育んだのである。


スサノヲ(スサノオ)


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Posted by スサノヲ(スサノオ) at 23:15│Comments(0)スサノヲの日本学
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